2020年6月に、米国放送局CNBCが「2020 ディスラプター50」を発表しました。 このブログでは、業界破壊企業の最新動向を定期的にお伝えしていきます。はじめの記事は、新型コロナも追い風になり、驚異的な成長をみせる証券分野の業界破壊企業「ロビンフッド(Robinhood)」の最新ニュースから。 ■ 4ヶ月で3回の資金調達。時価総額は112億ドルに (8/17) 新興オンライン証券の雄、ロビンフッドは、コロナ禍において驚異的な成長を遂げており、8月17日にベンチャーキャピタルから約210億円の資金調達を実施したと発表しました。 背景にあるのは、ロビンフッダーと呼ばれる大学生たちの間で、ゲーム感覚での株式取引が大ブームとなっているからです。 そのため、システム増強などに対する資金需要が旺盛で、ベンチャーキャピタル(セコイア、グーグル系など名だたるVC9社)に対して、2020年5月、7月、8月と矢継ぎ早の第三者割当増資を実行。今年トータルで800億円を超える資金を集め、時価総額は未上場ながら約1.2兆円となりました。 ■ ロビンフッドって、いったいなにもの? ロビンフッドは、2013年にスタンフォード大学でルームメイトだったウラジミール・テネフとバイジュ・バット(ともに移民2世)が立ちあげた、手数料無料で株式の売買ができる金融系スタートアップです。 サービスの特徴は、①手数料が無料、②1ドル未満のわずかな元手で、③スマホベースで気軽に株式の売買ができること。 そのため、投資経験がない若者 (利用者は平均31歳、ほぼ半数がビギナー) が、コロナ給付金などをもとに、ゲーム感覚で株式の売買に参加しはじめ、大きなトレンドとなりました。 例えば、ロビンフッドは2020年第1四半期(1~3月) に口座数を300万増やしましたが、これは「オンライン証券」が誕生して以来の衝撃と言われており、Eトレードなど大手の口座数を一気に抜きさって、業界関係者を驚かせました。 ロビンフットの共同創業者、テネフとバット ■ マーケットを動かし始めたZ世代 ゲーム感覚で株式に投資する若者たちは「ロビンフッダー」と呼ばれており、資産家が支配していたウォール街をも動かしつつあります。特にZ世代(1996年以降に生まれたソーシャルネイティブ世代)である大学生にとって、資本主義の支配層、特にウォール街に対する挑戦と言ってもいいかもしれません。 例えば、米国株式相場がコロナショックによる激震から素早く立ち直った背景にはロビンフッダーによる投資があるとの見方も少なくありません。 経済学者ケインズは「株式投資は美人投票のようだ」と例えましたが、初心者である彼らの行動は、まさに好きなブランドに対する投票といえます。そのため、Z世代に知名度の高い企業の株価に、ポジティブな影響がでてきています。 参考までロビンフッドで売買された株式 (2020年8月3日) ベスト5銘柄は、1位がTesla、2位がAmazon、3位がAppleとなっており、いずれも急騰しています。 ただし、これらの株式の急騰は、ロビンフッダーに加え、へッジファンドによる投資の影響も大きいと考えられていることを付け加えておきます。 若者によるロビンフットの使いかた解説。驚くほど使い勝手のよいアプリ ■ この会社の収益は、いったいどこから来るのだろう? それにしても「手数料が無料」の株式売買は、なぜ成立するのでしょう。従来の証券会社の常識を根本からくつがえす新興企業の収益は、いったいどころから来るのでしょう。 同社は、創業時から「収益より利用者の利便性を追求する」と宣言しており、①フリーミアムモデル(有料会員は一定額の融資を受けることができる)、②利用者の預かり口座から得られる金利 ③提携銀行からのデビットカード手数料 などが収益の基盤としているとしてきました。 しかし2018年、米国証券取引委員会(SEC)に提出した第二四半期の報告書から、同社が顧客の注文データをHFT(超高速取引)企業に売却する「ペイメント・フォー・オーダーフロー」という手法により、巨額の利益を得ていた事が明らかになったのです。 ■「ペイメント・フォー・オーダーフロー」って、どういうこと? ロビンフッドの主要クライアントである「HFT企業」とは、1ミリ秒(0.001秒)という超高速な売買を行うことで利益を生み出す仕組みを持つ投資企業のことです。 HFTが利益を生み出す仕組みは、市場間のわずかな価格差を検知して利ざやをあげる「アービトラージ取引」やニュースや経済指標が発表に時点で自動注文を入れる「ディレクショナル取引」などがありますが、「フロントランニング」と呼ばれる法律で禁じられた取引 ― 利用者の注文に対して、その注文が成立する前に超高速で買いと売りをほぼ同時に入れることで、100%に近い確率で利ざやを上げる ― をしているのではという疑いもあるようです。 いずれにしても、SEC報告書によってわかったのは、ロビンフッドは、HFTに利用者の注文情報を流すことでリベートを受け取り、収益の4割強をまかなっていたということ。それも、大手金融機関の10倍以上の単価でリベートを受け取っていたことがわかりました。 出典:清水葉子氏「アメリカの証券委託売買 手数料無料のビジネスモデル」より ロビンフットの快進撃に刺激を受けた証券業界では、昨年10月のチャールズ・シュワブを皮切りに、TDアメリトレード、Eトレードなども手数料無料に踏み切っていますが、そのいずれもが、HFTへ注文を回送することで利益をあげているようです。 なお、日本の証券業界にも売買手数料無料の波は届いていますが、注文回送へのリベートがないなど証券業界のビジネスモデルが異なるために、米国とは異なる流れになるだろうと予想されています。 ■ 社会の公器として問われる、ロビンフッドの功罪 "Investing for Everyone" ― その実現のために、ロビンフッドは収益を期待せず、損益ゼロになるよう運営する ― とは、創業者テネフ氏の言葉であり、同社の基本方針です。 リーマンショックに触発されて創業し、ウォール街に対する反体制文化と「富裕層から盗め」という精神で、ロビンフッドは若者の支持を受けて急成長しました。しかし、その収益の半分近くは、ウォール街でも物議を醸している取引慣行から得ていたことが明らかになり、弱者の味方どころか、強気を助け弱気をくじくのではないかと、一部から指摘されています。 また、今年3月の株式暴落のときに売買不能になるなど、急激な成長により生じたシステム障害が多いことも同社が抱える大きな課題です。さらに、今年の6月には、20才の大学生がスマホの情報を見誤り、巨額の赤字を抱えたと勘違いして自殺に追い込まれてしまったという悲劇まで発生しました。 それでも、コロナ禍で家に閉じこもる若者をウォール街に導き、先の見えない大暴落からマーケットを救ったロビンフッドは、投資家から見たら救世主にも見えるでしょう。 同社に大きな期待を寄せる著名ベンチャーキャピタルたちは、総額800億円という巨額の投資を行い、ロビンフットの勢いを強力に下支えする動きを見せています。 わずか7年前。ミレニアル世代の移民二世二人が創業した、ロビンフッド。 未上場ながら、時価総額1.2兆円。証券業界を破壊する勢いで成長する新興企業。 若者の、若者による、若者のための業界破壊企業が、今後、社会の公器としてどのように成長していくのか、その行く先に、大いなる注目が集まっています。 【関連情報】 ・最新の業界破壊企業の情報については こちら をどうぞ ・各種資料のダウンロードは こちら をどうぞ
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10月から始まる「hintゼミ 6期」の募集を、今週から本格的に開始しました。
こちらは「イノベーションクラス」の無料体験講座です。 今回は、新しい事業をつくるための具体的なブロセスをまとめた「hintフレームワーク」を大きくアップデイトしたので、それに基づくお話になります。 ・事業創造メソッド「hintフレームワーク ver2.0」について 特にチカラを入れたのは、何もアイデアがない状態から有望がアイデアをいかに生み出すところ。今回は、質の高い「問い」をあらかじめ用意することで、アイデアを閃きを誘発するステップを入れました。「新しい着眼点をひらめく問い」「新しい価値観をとりいれる問い」「最新の技術を組み入れる問い」「日本のトレンドを強みに変える問い」の4種類を用意しています。 また、PMF(製品市場フィット)の具体的なアプローチにもかなりチカラを入れました。「最小機能製品の事例」「最初の顧客のつくりかた」「ショーンエリスのテストを高めた事例」などを追加し、実践的、具体的に事業開発に役立つ内容に進化させています。 この無料体験講座でお話するスライドはこちらになります。 なお、この体験講座のベースとなっている「hintフレームワーク v2.0」についても、来週早々にはこちらのページで公開し、ダウンロードもできるようにする予定です。 フレームワーク自体は200ページを超える大作なので、ポイントをピックアップして、全体の流れを把握したいという方向けに、こちらの講座を用意しました。「hintフレームワーク2.0」にそったイノベーションのつくりかた講座です。 二回行いますが、同じ内容なので、ご都合のよい方をお選びください。 日時 :9月06日(日) 10:00〜11:40 (完了) :9月14日(月) 20:00〜21:40 :9月22日(火) 10:00〜11:40 料金 :無料 (人数限定あり) メディア :Zoom (申込みしてくださった方に斉藤からURLをご連絡します) アジェンダ: 第1部 ハッピー・イノベーションのつくりかた (60分) ・0 to 1 〜アイデアを発想する ・CPF 〜顧客に共感し、課題を発見する ・PSF 〜 課題に対する解決策をつくる ・PMF 〜 市場が受け入れる製品をつくる 第2部 深く学び、実践するために (20分) ・hintゼミについて ・hintゼミ対談 〜 ゼミの学びを、自分のチームに活かすには 第3部 質疑応答 (20分) Zoomベースのライブ講演で、講師は僕です。第二部ではhintゼミメンバーも参加して「hintゼミで学んだことを、現実のチームの中で、どう活かしていくか」みたいな話もしようかなと思ってます。hintゼミメンバーも参加して、ゼミの紹介も入りますが、聞いてもらえるとうれしいです。(hintゼミメンバーは、僕にとって価値観と知見をともにしたよき友人であり、頼れる同志です) 個人ないし企業で □ 強みを生かした、新商品やサービスのつくりかたを知りたい □ 最短・最小コストで成功する事業のつくりかたを知りたい なんとなくわかってるんだけど、もっと具体的で、かつ、明日から活かせる手法を具体的に知りたい。そんな思いを持つ方におすすめです。個人の起業だけでなく、企業の事業開発にも役立つ内容です。よろしければどうぞお気軽にご参加ください。 それと、経営学クラス無料体験講座のご案内はこちらです。 ・幸せも成果も持続する、すごいチームのつくりかた講座 いずれもZoomの人数制限がありますので、お早めに。ではではー 経営学とイノベーションの講義資料を磨き続けて、もう約5年。講義づくりは、完全に僕のライフワークになっちゃいました。新しい文献やニュース、ブログなどに触れるたびにメモを書き、それを定期的にアップデイトする毎日です。 で、今回は「hintゼミ 第6期」の募集も開始したので、それにあわせて、新しい「すごいチームのつくりかた」をオープンしたいと思います。 この内容は、hintゼミの「経営学」の入門編として、エッセンスをまとめた資料です。(入門編としましたが、実際にはめちゃ濃い内容になっちゃてます?) 三ヶ月前の資料から更新したところは「ポストコロナ」のところとか「心理的安全性をどう高めていくかの具体的なアプローチ」とか、ストーリーの構成も含めて、かなりいっぱい。学習院大学時代に、講義やチームdotで何回もトライした「マシュマロ・チャレンジ」のビデオも入れて、できるかぎりわかりやすくつくってみました。 新作はこんな感じです。いかがでしょう?
講演に使うスライド。クリックすれば、すべて内容を閲覧できます
あわせて、書面だけではなかなか伝わりにくいので、このスライドをベースにしたライブ講義を「hintゼミ無料体験講座」として行うことにしました。二回行いますが、同じ内容なので、ご都合のよい方をお選びください。 日時 :9月03日(木) 20:00〜21:40 (完了) :9月12日(土) 10:00〜11:40 :9月21日(月) 20:00〜21:40 料金 :無料 (人数限定あり) メディア :Zoom (申込みしてくださった方に斉藤からURLをご連絡します) アジェンダ: 第1部 幸せ視点で考える、いいチームのつくりかた (60分) ・ポスト・コロナを考える ・つながりは資本である ・組織の土壌をこわすもの ・豊かな土壌をつくるもの 第2部 深く学び、実践するために (20分) ・hintゼミについて ・hintゼミ対談 〜 ゼミの学びを、自分のチームに活かすには 第3部 質疑応答 (20分) Zoomベースのライブ講演で、講師は僕です。第二部ではhintゼミメンバーも参加して「hintゼミで学んだことを、現実のチームの中で、どう活かしていくか」みたいな話もしようかなと思ってます。hintゼミメンバーも参加して、ゼミの紹介も入りますが、聞いてもらえるとうれしいです。(hintゼミメンバーは、僕にとって価値観と知見をともにしたよき友人であり、頼れる同志です) ご自身の組織やチームを □ 社員が働きがいを感じる組織をつくりたい □ 指示なしで自律的に動くチームをつくりたい □ 心理的に安全な場のつくりかたを知りたい なんとなくわかってるんだけど、そのための知識を体系的な学びたいし、明日から活かせる手法を具体的に知りたい。そんな思いや悩みを持つ方におすすめです。よろしければどうぞお気軽にご参加ください。 それと、イノベーションクラス無料体験講座のご案内はこちらです。 ・最新版!ハッピー・イノベーションのつくりかた講座 Zoomの人数制限がありますので、お早めに。ではではー |
著者ビジネス・ブレークスルー大学教授、現役起業家の斉藤徹です。人を幸せにしたいと願う起業家や社会人を育て、一緒に世界をもっと優しいところにする活動をしてます。 アーカイブ
8月 2021
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