学習院大学の講義が終わっでブログが途絶えていたので、これからは趣をかえて「幸せ視点の経営」や「業界破壊企業」について、ノート感覚でブログしていこうと思います。 はじめの一歩は、幸せ視点の経営に対する、根本的な疑問から。 「幸せ視点の経営」というと、反射的にいただくのが「でも、売上や利益は大切ですよね」という質問です。売上や利益は大切。それに反対する人はいないし、僕も心からそう思います。売上や利益がないと、会社は持続することができないからです。 経営者の考え方を「お金視点」と「幸せ視点」とわけて、その特徴をまとめてみました。ほとんどの企業は「お金視点」で経営してますね。株式会社の仕組み自体が「株主視点(投資家視点)」でつくられたものだからだし、上場して株主が強くなると、より短期的な利益を求められるようになるからです。 では「お金視点」で売上を必死に求めたら、ほんとうに売上は上がるのでしょうか。 商品やサービスをよくしたり、売れる仕組みをつくったりすることはもちろん大切。でも会社の実力以上に「無理にでも売上をあげたい」と思うのが経営者の常。そこで、細かく数値目標を立てて、それを達成しようとすることになります。 でも、僕はそういう過度な管理には反対する立場をとっています。 なぜなら、売上は求めると逃げてしまうものだから。 お客さんの立場になれば、わりと当たり前です。こちらの話を聞かずに契約を急ぐ営業マンからは逃げたくなっちゃうし、少なくとも「私、ずっとこの人から買おう♡」とは思わないもの。 それに、その営業マンこそかわいそう。課長から「予算必達だぞ!ギャップを埋めるプランを今日中に出せ!」なんて詰められたら、お客さんのことなんか考える余裕なんて1ミリもないからです。 結果を求めると、結果が逃げてしまう。 ここに経営の本質があるんじゃないかなと思ってます。 じゃあ、なんで管理者はそう思ってしまうのか。 それは、若いころの経験が生んだメンタルモデルが原因かも知れません。 毎日勉強すれば必ず成績はあがる。毎日トレーニングすれぱ必ず身体能力が高まる。自分を律することができる成績優秀だった人ほど、出世して管理職になる傾向があります。そして、みずからの成功体験から「組織も厳しく律すれば成果を出せるはず」と思ってしまうのでしょう。 でも「勉強や運動」と「営業」は根本的に違う。勉強や運動は「自分が頑張ればいいこと」ものだけど、営業は「人を相手にすること」であり、人には「心」があるからです。 人は誰しも「自分が主役の人生」を送っていて「自分の行動は、自分で決めたい」と思って生きてます。買えと言われれば買いたくなくなるし、売れと言われれば売りたくなくなる。したいことがあっても、無理にすすめられるとしたくなくなる生き物なのです。 だから、成果をあげようとすると、成果は逃げていく。 じゃあ、どうすればいいのか。それは「急がばまわれ」でいくことです。それをわかりやすく分解したのが、ダニエル・キムが提唱した「成功循環モデル」です。 こちらは「売上は求めると逃げてしまう」ことをあらわしたサイクルです。 無理に売上(結果)をあげようとすると、人への強制が増えていく。そのため、メンバーにストレスがかかり、人間関係が悪くなる。「結果だけあげればいいんだろ」ってことになり、それ以外のことに無関心になる。そういう組織はパフォーマンスが落ちるので、管理者の眉が釣り上がり、予算必達の圧力が強まっていく。地獄のようなサイクルです。 では、どうすれば「いいサイクル」を作れるのでしょう。それは、面倒でも「メンバーの人間関係」を高めていくこと。まずは対話から始める。リーダーが胸襟をひらいて、みんなで率直に話し合い、信頼関係を築く。すると前向きな気持ちになり、いいアイデアが生まれ、一人ひとりが自律的に行動するようになる。そういう組織はパフォーマンスがいいから、結果を出してさらに結束が固める。幸せなサイクルです。 これが、チームの成功を生むための「いいサイクル」です。 「幸せ視点の経営」とは、この成功循環モデルを基軸として、さらに、どうすればメンバーひとりひとりが仕事に熱中できるか、どうすれば息のあったコラボレーションが生まれるか、どうすれば個人のワクワクと組織の目標がひとつになるか、ということを一つずつ知見と技術に基づいて実現していく経営のことです。 ただし「幸せ視点の経営」は「お金視点の経営」よりむずかしい。それは人間に対する深い理解や、自分自身の人間的な成長、さらに動機づけや場の安全性を高めるための知見や技術の習得が必要となるからです。このあたりを話し始めると、延々と長くなってしまうので、次回以降のテーマとしましょう。(もっと知りたい方は こちら へどうぞ) 最後に、大切なことをひとつだけ。 やっぱり「結果」も「人間関係」も大切だから、両方とも同時に実現しよう。 と欲張るのは「ご法度」だということ。 そのふたつを同時に求めると、数値化されてわかりやすい「結果」の方が重視されて、必ず悪い循環に入っていきます。しかも、矛盾する指示による「言行の不一致」によって、リーダーの信頼は毀損することになってゆきます。 いや、そんな時間はない。もうほんとにギリギリのところなんだ。 その気持ち、痛いほどわかります。僕がほんとうにそうだったから。でも、そんな失敗経験が教えてくれたことは「無理に結果を出そう」とせずに「成功の循環をできるかぎり高速で回す」ことが大切だということ。 リーダーがメンバーに悩みを打ち明け、情報をオープンにして、彼らの意見を傾聴する。そして組織をよくするための第三案を熱意をもって話し合うこと。そこから起死回生のアイデアや、それを実現するためのチームの一体感がでてきます。この学びのサイクルを高速化するのです。 何度も何度も失敗して、熱いヤカンにさわって学んできた僕がいうのだから、間違いありません😁 リーダーは悩みをひとりで抱えるのをやめて、今からメンバーに話しかけてみましょう。きっとそこから、いい循環は始まります。 【今日のまとめ】 1. 結果をあげようとすると、結果は逃げてしまう。 2. 成功の循環を常に意識する。胸襟を開き、対話することから始める。 3. さらに「幸せ視点」の知見や技術を知ると、チームは萌えて自走する。 4. 二兎 (結果も人間関係も) 追う者は、一兎も得ず。
2 コメント
ほりぐち
6/1/2020 13:29:45
先日のオンラインセミナーで、お世話になりました。
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いつもお世話になっております。
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著者ビジネス・ブレークスルー大学教授、現役起業家の斉藤徹です。人を幸せにしたいと願う起業家や社会人を育て、一緒に世界をもっと優しいところにする活動をしてます。 アーカイブ
8月 2021
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