「2018 CNBC Disruptor50」は、ニュース専門局CNBCが毎年発表している世界のディスラプター、トップ50リストである。ディスラプターとは「業界の破壊者」、業界秩序や商習慣にとらわれずに、斬新なビジネスモデルやテクノロジーを市場に持ち込み、驚くべきスピードで顧客を獲得している企業を指す。(詳しくは こちらの記事 をどうぞ) このブログでは、独自の基準で、この50社の「5つのタイプ」への分類を試みた。
今回の記事では「新しい着眼点で、常識を覆すプライスを実現した価格破壊型」のディスラプター8社について、主要なスペックを記するとともに、イノベーションの基本となる「顧客」「課題」「事業の着眼点」についてシンプルな言葉で整理してみたい。
なお、説明文では「なぜ業界を揺るがすような価格破壊を実現できたのか」を探り、それぞれのビジネスモデルの特徴についても言及しているので、ぜひ自社のビジネスの参考にしてほしい。 8. Udacity (2011年創業、オンライン教育) インターネットを活用し、安価で質の高いオンライン教育サービスを提供するパイオニア的な存在がUdacityだ。低価格をもたらしたのは「動画をベースにしたフリーミアムモデル」の構築だ。自宅やオフィスで質の高い講義を受講できる画期的なサービスは、旧態然とした教育業界に衝撃的な価格破壊をもたらした。推定時価総額は1100億円のユニコーン企業だ。 関連記事:UdacityとGoogleが新卒や中途転職者のための無料のキャリアコース12種を開始 9. Rent the Runway (2009年創業、ブランド品レンタル) 結婚式などで高級な服を着たいが高すぎるというブランド好き女性の悩みを解決するために、ネットをフル活用してブランド品をレンタルする、ブランド品のシェアサービスだ。低価格を実現したのは「レンタルモデル」、破壊するのはファッション、小売、EC業界だ。すでに1000億円近い時価総額と予想されている。 関連記事:将来は「レンタル」ボタンが当たり前に?Rent The Runway共同創業者の講演レポ 11. TransferWise (2010年創業、個人海外送金) 海外在住者や留学生、その家族など、日常的に海外送金しているが、このコストが高くて困っているユーザーに向いて、格安の手数料で送金できるようにしたFIntechサービス。TransferWiseは世界中に口座を持ち、リアルタイムの為替レートで同社が両替を実施することで、為替手数料をゼロにした価格破壊サービスだ。つまり低価格は「実際の海外送金を発生させずに送金する仕組み」(動画を参照)という素晴らしい着眼により実現されている。推定時価総額は1700億円である。 関連記事:常識を覆す海外送金サービス「TransferWise」を使ってみた 12. Oscar Health (2012年創業、オンライン医療保険) 医療費が高いことで知られる米国では安価に医療を受けたい人が非常に多い。そのような悩みを持つ米国人にとって救世主的なサービスが、スマホをベースにしたオンライン医療保険、Oscar Healthだ。同サービスに加入すると、無償で医師による電話診療や往診、配薬、一般的な検査まで無償で提供。フィットネス実施で報奨金を受け取れるなどユニークなサービスもある。申込みはすべてスマホで完結、過去のログも管理される優れものだ。低価格のキモは「スマホ特化」した着眼だろう。なお時価総額は3500億円と推定されている。 関連記事:Oscar Health、米国版国民皆保険となりうるか? 14. SurveyMonkey (1999年創業、アンケートツール) Survey Moneyは無料で手軽に調査ができるアンケートツールだ。特に顧客や社員の声を経営に活かしたい企業の強い味方となっており、日本にも多くのユーザーがいる。低価格を実現できたのは、細かいカスタマイズが多いアンムートシステムを「シンプルなサービス」にしたこと。それによる「フリーミアムモデル」の構築にある。2018年にIPO、時価総額は現時点で1800億円ほどだ。 関連企業:アンケート管理サービスのSurveyMonkeyがIPO後はじめての決算発表 28. Xiaomi (2010年創業、スマホ・家電製造) 2010年に創業されたにもかかわらず、驚くべきスピートで急成長した中国の家電メーカー、Xiaomi(シャオミ)。すでに売上高は約2兆円、時価総額も約5兆円に達している。スマホメーカーとして創業、iPhoneがほしいけれども高くて買えない一般ユーザーにむけて原価に近い価格で高性能機器を販売、広告やゲームなどのサービスで収益をあげた。低価格を実現できたのは、本体は原価で配布して付属品で利益をあげる「ジレットモデル」の構築によるところが大きい。現在は機器にとどまらず、Amazonのようなあらゆるモノやサービスを提供する経済圏としての拡大を目指している。 関連記事:新型iPhoneもお手上げ…「中国スマホ市場失速」でもシャオミが絶好調な理由 35. Duolingo (2011年創業、アプリによる語学教育) Duolingoはアプリによる語学学習のパイオニアだ。 すでに数十という多国語に対応しており、スマホベースに無償で言語を学ぶことができる。また利用者が学習に熱中するようゲーミフィケーションを多用している他、データ駆動型の教育手法を重視しており、機械学習をフルに活用することで高い学習効率を生み出している。収益は広告とサブスクリプションという「フリーミアムモデル」。それに上級者の学習プロセスで翻訳活動を行い、その結果に対して企業がDuolingoに翻訳料を支払う仕組みも持っているようだ。これは「認証の手続きで正しいテキストを入力させ、その結果をOCRデータ解読にも活用」する一石二鳥の「reCAPTCHAモデル」と同じものだ。時価総額は800億円と推定されている。 関連記事:AIで破壊的革新を起こす--語学学習プラットフォームDuolingoの取り組み 38. Robinhood (2013年、ネット金融取引) Robinhoodは、無料の株式売買サービス。まさに業界の価格破壊者だ。ゼロにしたのは株式の売買手数料であり、それを実現したのは「顧客の注文データの企業への販売」である。2018年2月からは仮想通貨も対象となった。しかし、最近になってこの販売価格が注文あたり約0.009円〜約0.029円と高額で同業他社の10倍以上でありことから、一部で懸念が高まっているというニュースも流れている。 関連記事:手数料無料のRobinhoodはどのようにして収益を得ているのか? イノベーションに関する関連記事は こちら 08. "2018 Disruptor50" 資料の総まとめ (2018) 07. フォロー戦略で急成長する破壊者 (2018) 06. 際立った顧客サービスを持つ破壊者 (2018) 05. 常識を覆す低価格を実現した破壊者 (2018) 04. P2Pプラットフォームを持つ破壊者 (2018) 03. 独自のテクノロジーを持つ破壊者 (2018) 02. 業界を破壊する新興企業トップ50 (2018) 01. イノベーションの教科書、iWokrout
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著者ビジネス・ブレークスルー大学教授、現役起業家の斉藤徹です。人を幸せにしたいと願う起業家や社会人を育て、一緒に世界をもっと優しいところにする活動をしてます。 アーカイブ
8月 2021
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