「2018 CNBC Disruptor50」は、ニュース専門局CNBCが毎年発表している世界のディスラプター、トップ50リストである。ディスラプターとは「業界の破壊者」、業界秩序や商習慣にとらわれずに、斬新なビジネスモデルやテクノロジーを市場に持ち込み、驚くべきスピードで顧客を獲得している企業を指す。(詳しくは こちらの記事 をどうぞ) このブログでは、独自の基準で、この50社の「5つのタイプ」への分類を試みた。
今回の記事では「先行者ととも業界を破壊するフォロアー型」のディスラプター10社について、主要なスペックを記するとともに、イノベーションの基本となる「顧客」「課題」「事業の着眼点」についてシンプルな言葉で整理してみたい。
この10社は、先行企業と異なるエリアへの展開、先行研究による差別化戦略などより、先行とともに業界を破壊する企業である。その昔、ソニーと松下電器(現パナソニック)の関係は、ソニーが業界のパイオニアとして先行してブランドを高める一方で、松下電器はその技術をフォローすることで利益をあげていた。松下は「マネシタ電器」と陰口をたたかれながらも業界トップを維持していたのだ。 参考まで、古典的戦略論「ランチェスターの戦略」では、弱者のとるべき戦略が「差別化戦略」であるのに対して、強者は「ミート戦略」(模倣戦略) とした。強者はあえて敵と同質な作戦をとり、持てる兵力によって相手を圧倒するという作戦だ。つまり当時の松下電器の戦略は合理的だったわけである。 市場環境や変化スピードがまったく異なる現代のビジネスにおいて、安易にこの戦略をあてはめることはできないが、(1)先行企業が切り拓いた市場が極めて有望で二番手でも十分に利益が見込める、(2)先行企業がカバーできないエリアで強みを発揮できる、(3)先行サービスに改善を加えて差別化を図る余地がある (4)先行者に対して経営資源で強みがあり先行者と同等のスピート経営ができる ようなケースにおいては、この「ミート戦略」は依然として有効だ。 それにしても、ナンバー1が業界利益を独占することが多いインターネット時代において、50社のうち2割にあたる10社がフォロー戦略の企業であったことに、筆者は驚きを感じている。ディスラプターと呼ばれる業界破壊者は、必ずしもテクノロジーのジレンマを解消したイノベーターだけではない。十分な経営資源を持ち、すばやく二番手参入するフォロアーにも十分な勝機があるのだ。そのことをこの10社が証明していると言えるだろう。 著名企業も多く、各ディスラプターを個別にはコメントしないが、業種視点では以下のように分類できる。
1. Uberの切り拓いた事業分野は極めて有望で他業種展開も見込める反面、各地域の法制度や慣習に従う必要があるので、地域毎にフォロアーが立ち上がり、それぞれ急成長している。 2. 遺伝子検査におけるフォロワー、Veritasは全ゲノム情報に対象を広げたことで、先行企業である23andMeと差別化している。 3. 先行したUdacityが企業ベースでテック系の講義が中心なのに対して、Courseraはスタンフォード大学教授が立ち上げたこともあり、多くの大学とコラボしており、幅広い学びを得られるところが差別化のポイントだ。Udacityは職業訓練校、Courseraは高等教育の常識を破壊したとも言えよう。 Fintechおよびデジタルマーケティング分野においてもフォロワーで成功している企業が多い。それぞれ先行企業にがいるが、分野が多岐にわたり、地域特性が大きいこともフォロワー成立の要因だろう。 イノベーションに関する関連記事は こちら 08. "2018 Disruptor50" 資料の総まとめ (2018) 07. フォロー戦略で急成長する破壊者 (2018) 06. 際立った顧客サービスを持つ破壊者 (2018) 05. 常識を覆す低価格を実現した破壊者 (2018) 04. P2Pプラットフォームを持つ破壊者 (2018) 03. 独自のテクノロジーを持つ破壊者 (2018) 02. 業界を破壊する新興企業トップ50 (2018) 01. イノベーションの教科書、iWokrout
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著者ビジネス・ブレークスルー大学教授、現役起業家の斉藤徹です。人を幸せにしたいと願う起業家や社会人を育て、一緒に世界をもっと優しいところにする活動をしてます。 アーカイブ
8月 2021
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