2020年6月に、米国放送局CNBCが「2020 ディスラプター50」を発表しました。 このブログでは、業界破壊企業の最新動向を定期的にお伝えしていきます。はじめの記事は、新型コロナも追い風になり、驚異的な成長をみせる証券分野の業界破壊企業「ロビンフッド(Robinhood)」の最新ニュースから。 ■ 4ヶ月で3回の資金調達。時価総額は112億ドルに (8/17) 新興オンライン証券の雄、ロビンフッドは、コロナ禍において驚異的な成長を遂げており、8月17日にベンチャーキャピタルから約210億円の資金調達を実施したと発表しました。 背景にあるのは、ロビンフッダーと呼ばれる大学生たちの間で、ゲーム感覚での株式取引が大ブームとなっているからです。 そのため、システム増強などに対する資金需要が旺盛で、ベンチャーキャピタル(セコイア、グーグル系など名だたるVC9社)に対して、2020年5月、7月、8月と矢継ぎ早の第三者割当増資を実行。今年トータルで800億円を超える資金を集め、時価総額は未上場ながら約1.2兆円となりました。 ■ ロビンフッドって、いったいなにもの? ロビンフッドは、2013年にスタンフォード大学でルームメイトだったウラジミール・テネフとバイジュ・バット(ともに移民2世)が立ちあげた、手数料無料で株式の売買ができる金融系スタートアップです。 サービスの特徴は、①手数料が無料、②1ドル未満のわずかな元手で、③スマホベースで気軽に株式の売買ができること。 そのため、投資経験がない若者 (利用者は平均31歳、ほぼ半数がビギナー) が、コロナ給付金などをもとに、ゲーム感覚で株式の売買に参加しはじめ、大きなトレンドとなりました。 例えば、ロビンフッドは2020年第1四半期(1~3月) に口座数を300万増やしましたが、これは「オンライン証券」が誕生して以来の衝撃と言われており、Eトレードなど大手の口座数を一気に抜きさって、業界関係者を驚かせました。 ロビンフットの共同創業者、テネフとバット ![]() ■ マーケットを動かし始めたZ世代 ゲーム感覚で株式に投資する若者たちは「ロビンフッダー」と呼ばれており、資産家が支配していたウォール街をも動かしつつあります。特にZ世代(1996年以降に生まれたソーシャルネイティブ世代)である大学生にとって、資本主義の支配層、特にウォール街に対する挑戦と言ってもいいかもしれません。 例えば、米国株式相場がコロナショックによる激震から素早く立ち直った背景にはロビンフッダーによる投資があるとの見方も少なくありません。 経済学者ケインズは「株式投資は美人投票のようだ」と例えましたが、初心者である彼らの行動は、まさに好きなブランドに対する投票といえます。そのため、Z世代に知名度の高い企業の株価に、ポジティブな影響がでてきています。 参考までロビンフッドで売買された株式 (2020年8月3日) ベスト5銘柄は、1位がTesla、2位がAmazon、3位がAppleとなっており、いずれも急騰しています。 ただし、これらの株式の急騰は、ロビンフッダーに加え、へッジファンドによる投資の影響も大きいと考えられていることを付け加えておきます。 若者によるロビンフットの使いかた解説。驚くほど使い勝手のよいアプリ ■ この会社の収益は、いったいどこから来るのだろう? それにしても「手数料が無料」の株式売買は、なぜ成立するのでしょう。従来の証券会社の常識を根本からくつがえす新興企業の収益は、いったいどころから来るのでしょう。 同社は、創業時から「収益より利用者の利便性を追求する」と宣言しており、①フリーミアムモデル(有料会員は一定額の融資を受けることができる)、②利用者の預かり口座から得られる金利 ③提携銀行からのデビットカード手数料 などが収益の基盤としているとしてきました。 しかし2018年、米国証券取引委員会(SEC)に提出した第二四半期の報告書から、同社が顧客の注文データをHFT(超高速取引)企業に売却する「ペイメント・フォー・オーダーフロー」という手法により、巨額の利益を得ていた事が明らかになったのです。 ■「ペイメント・フォー・オーダーフロー」って、どういうこと? ロビンフッドの主要クライアントである「HFT企業」とは、1ミリ秒(0.001秒)という超高速な売買を行うことで利益を生み出す仕組みを持つ投資企業のことです。 HFTが利益を生み出す仕組みは、市場間のわずかな価格差を検知して利ざやをあげる「アービトラージ取引」やニュースや経済指標が発表に時点で自動注文を入れる「ディレクショナル取引」などがありますが、「フロントランニング」と呼ばれる法律で禁じられた取引 ― 利用者の注文に対して、その注文が成立する前に超高速で買いと売りをほぼ同時に入れることで、100%に近い確率で利ざやを上げる ― をしているのではという疑いもあるようです。 いずれにしても、SEC報告書によってわかったのは、ロビンフッドは、HFTに利用者の注文情報を流すことでリベートを受け取り、収益の4割強をまかなっていたということ。それも、大手金融機関の10倍以上の単価でリベートを受け取っていたことがわかりました。 出典:清水葉子氏「アメリカの証券委託売買 手数料無料のビジネスモデル」より ロビンフットの快進撃に刺激を受けた証券業界では、昨年10月のチャールズ・シュワブを皮切りに、TDアメリトレード、Eトレードなども手数料無料に踏み切っていますが、そのいずれもが、HFTへ注文を回送することで利益をあげているようです。 なお、日本の証券業界にも売買手数料無料の波は届いていますが、注文回送へのリベートがないなど証券業界のビジネスモデルが異なるために、米国とは異なる流れになるだろうと予想されています。 ■ 社会の公器として問われる、ロビンフッドの功罪 "Investing for Everyone" ― その実現のために、ロビンフッドは収益を期待せず、損益ゼロになるよう運営する ― とは、創業者テネフ氏の言葉であり、同社の基本方針です。 リーマンショックに触発されて創業し、ウォール街に対する反体制文化と「富裕層から盗め」という精神で、ロビンフッドは若者の支持を受けて急成長しました。しかし、その収益の半分近くは、ウォール街でも物議を醸している取引慣行から得ていたことが明らかになり、弱者の味方どころか、強気を助け弱気をくじくのではないかと、一部から指摘されています。 また、今年3月の株式暴落のときに売買不能になるなど、急激な成長により生じたシステム障害が多いことも同社が抱える大きな課題です。さらに、今年の6月には、20才の大学生がスマホの情報を見誤り、巨額の赤字を抱えたと勘違いして自殺に追い込まれてしまったという悲劇まで発生しました。 それでも、コロナ禍で家に閉じこもる若者をウォール街に導き、先の見えない大暴落からマーケットを救ったロビンフッドは、投資家から見たら救世主にも見えるでしょう。 同社に大きな期待を寄せる著名ベンチャーキャピタルたちは、総額800億円という巨額の投資を行い、ロビンフットの勢いを強力に下支えする動きを見せています。 わずか7年前。ミレニアル世代の移民二世二人が創業した、ロビンフッド。 未上場ながら、時価総額1.2兆円。証券業界を破壊する勢いで成長する新興企業。 若者の、若者による、若者のための業界破壊企業が、今後、社会の公器としてどのように成長していくのか、その行く先に、大いなる注目が集まっています。 【関連情報】 ・最新の業界破壊企業の情報については こちら をどうぞ ・各種資料のダウンロードは こちら をどうぞ
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10月から始まる「hintゼミ 6期」の募集を、今週から本格的に開始しました。
こちらは「イノベーションクラス」の無料体験講座です。 今回は、新しい事業をつくるための具体的なブロセスをまとめた「hintフレームワーク」を大きくアップデイトしたので、それに基づくお話になります。 ・事業創造メソッド「hintフレームワーク ver2.0」について 特にチカラを入れたのは、何もアイデアがない状態から有望がアイデアをいかに生み出すところ。今回は、質の高い「問い」をあらかじめ用意することで、アイデアを閃きを誘発するステップを入れました。「新しい着眼点をひらめく問い」「新しい価値観をとりいれる問い」「最新の技術を組み入れる問い」「日本のトレンドを強みに変える問い」の4種類を用意しています。 また、PMF(製品市場フィット)の具体的なアプローチにもかなりチカラを入れました。「最小機能製品の事例」「最初の顧客のつくりかた」「ショーンエリスのテストを高めた事例」などを追加し、実践的、具体的に事業開発に役立つ内容に進化させています。 この無料体験講座でお話するスライドはこちらになります。 なお、この体験講座のベースとなっている「hintフレームワーク v2.0」についても、来週早々にはこちらのページで公開し、ダウンロードもできるようにする予定です。 フレームワーク自体は200ページを超える大作なので、ポイントをピックアップして、全体の流れを把握したいという方向けに、こちらの講座を用意しました。「hintフレームワーク2.0」にそったイノベーションのつくりかた講座です。 二回行いますが、同じ内容なので、ご都合のよい方をお選びください。 日時 :9月06日(日) 10:00〜11:40 (完了) :9月14日(月) 20:00〜21:40 :9月22日(火) 10:00〜11:40 料金 :無料 (人数限定あり) メディア :Zoom (申込みしてくださった方に斉藤からURLをご連絡します) アジェンダ: 第1部 ハッピー・イノベーションのつくりかた (60分) ・0 to 1 〜アイデアを発想する ・CPF 〜顧客に共感し、課題を発見する ・PSF 〜 課題に対する解決策をつくる ・PMF 〜 市場が受け入れる製品をつくる 第2部 深く学び、実践するために (20分) ・hintゼミについて ・hintゼミ対談 〜 ゼミの学びを、自分のチームに活かすには 第3部 質疑応答 (20分) Zoomベースのライブ講演で、講師は僕です。第二部ではhintゼミメンバーも参加して「hintゼミで学んだことを、現実のチームの中で、どう活かしていくか」みたいな話もしようかなと思ってます。hintゼミメンバーも参加して、ゼミの紹介も入りますが、聞いてもらえるとうれしいです。(hintゼミメンバーは、僕にとって価値観と知見をともにしたよき友人であり、頼れる同志です) 個人ないし企業で □ 強みを生かした、新商品やサービスのつくりかたを知りたい □ 最短・最小コストで成功する事業のつくりかたを知りたい なんとなくわかってるんだけど、もっと具体的で、かつ、明日から活かせる手法を具体的に知りたい。そんな思いを持つ方におすすめです。個人の起業だけでなく、企業の事業開発にも役立つ内容です。よろしければどうぞお気軽にご参加ください。 それと、経営学クラス無料体験講座のご案内はこちらです。 ・幸せも成果も持続する、すごいチームのつくりかた講座 いずれもZoomの人数制限がありますので、お早めに。ではではー 経営学とイノベーションの講義資料を磨き続けて、もう約5年。講義づくりは、完全に僕のライフワークになっちゃいました。新しい文献やニュース、ブログなどに触れるたびにメモを書き、それを定期的にアップデイトする毎日です。 で、今回は「hintゼミ 第6期」の募集も開始したので、それにあわせて、新しい「すごいチームのつくりかた」をオープンしたいと思います。 この内容は、hintゼミの「経営学」の入門編として、エッセンスをまとめた資料です。(入門編としましたが、実際にはめちゃ濃い内容になっちゃてます?) 三ヶ月前の資料から更新したところは「ポストコロナ」のところとか「心理的安全性をどう高めていくかの具体的なアプローチ」とか、ストーリーの構成も含めて、かなりいっぱい。学習院大学時代に、講義やチームdotで何回もトライした「マシュマロ・チャレンジ」のビデオも入れて、できるかぎりわかりやすくつくってみました。 新作はこんな感じです。いかがでしょう?
講演に使うスライド。クリックすれば、すべて内容を閲覧できます
あわせて、書面だけではなかなか伝わりにくいので、このスライドをベースにしたライブ講義を「hintゼミ無料体験講座」として行うことにしました。二回行いますが、同じ内容なので、ご都合のよい方をお選びください。 日時 :9月03日(木) 20:00〜21:40 (完了) :9月12日(土) 10:00〜11:40 :9月21日(月) 20:00〜21:40 料金 :無料 (人数限定あり) メディア :Zoom (申込みしてくださった方に斉藤からURLをご連絡します) アジェンダ: 第1部 幸せ視点で考える、いいチームのつくりかた (60分) ・ポスト・コロナを考える ・つながりは資本である ・組織の土壌をこわすもの ・豊かな土壌をつくるもの 第2部 深く学び、実践するために (20分) ・hintゼミについて ・hintゼミ対談 〜 ゼミの学びを、自分のチームに活かすには 第3部 質疑応答 (20分) Zoomベースのライブ講演で、講師は僕です。第二部ではhintゼミメンバーも参加して「hintゼミで学んだことを、現実のチームの中で、どう活かしていくか」みたいな話もしようかなと思ってます。hintゼミメンバーも参加して、ゼミの紹介も入りますが、聞いてもらえるとうれしいです。(hintゼミメンバーは、僕にとって価値観と知見をともにしたよき友人であり、頼れる同志です) ご自身の組織やチームを □ 社員が働きがいを感じる組織をつくりたい □ 指示なしで自律的に動くチームをつくりたい □ 心理的に安全な場のつくりかたを知りたい なんとなくわかってるんだけど、そのための知識を体系的な学びたいし、明日から活かせる手法を具体的に知りたい。そんな思いや悩みを持つ方におすすめです。よろしければどうぞお気軽にご参加ください。 それと、イノベーションクラス無料体験講座のご案内はこちらです。 ・最新版!ハッピー・イノベーションのつくりかた講座 Zoomの人数制限がありますので、お早めに。ではではー 幸せ視点の経営学やイノベーションを学ぶ「hintゼミ」では、有志メンバーがオンラインで集い、Zoom会議やFaceookグループを通じて「ポストコロナにおける組織のあり方」を考えてきました。 このたび、その三ヶ月間の成果として、hintレポート Vol.2「これからのオンライン会議」をまとめましたので、こちらにシェアいたします。 コロナショックに関する議論は、政治・経済・社会・医療と広範囲にわたりますが 私たちは、コロナ禍の企業活動への影響を考察する中で、特に変化の核心となった 「これからの会議のあり方」にフォーカスして議論しました。 この記事では、キーとなるチャートをいくつかご紹介しましょう。 まずは、Zoomなどの「オンライン会議」と会議室でおこなう「リアル会議」の違いについて、対人の場合とグループの場合についてまとめてみました。 この背景のキーとなるのは、Zoomなどのオンライン会議で伝わる「非言語コミュニケーション」の種類です。それをシンプルにまとめたのがこの表です。レポート内には詳細な表もありますので、ぜひご覧ください。 さらに、会議の価値とコストという視点から、オンライン会議とリアル会議を比較してみました。機能価値と情緒価値、機能コストと情緒コスト、4つの視点から考察したものです。 このような考察とともに、hintゼミと関連の深いZ世代チーム「株式会社dot」では、週次の定例会議を実験的にオンラインとリアルの交互で行い、その違いを毎週ディスカッションすることで、会議の違いや使い方について学習してきました。 それらの知見も踏まえて、最後のまとめとして、オンライン会議とリアル会議が、それぞれがどのような使い方にむいているか、留意点も含めて「会議使い分けのポイント」として、まとめてみました。 いかがでしたでしょうか? 私たちhintゼミでは、新技術によるイノベーション「オンライン会議」を、積極的に企業のビジネスプロセスに取り入れることは、ポストコロナを生き抜くために避けられない道であり、その活用は組織進化のキーとなるとも考えています。 この考察が、貴社改革の一助となり、働く方々の幸せにつながること。 それが、このレポートにこめた私たちの願いです。 なお、このレポートは こちら (みんなの図書館) からダウンロード していただけます。この図書館には hintレポート vol.1「ポストコロナ、組織のあり方を考えよう」もアップしてあります。ご参考になるところがあれぱ、どうぞ、ご自由にお使いくださいませ。 関連記事 ・hintレポートvol.1「ポストコロナ、組織のあり方を考えよう」を公開します ・hintゼミをご紹介します
2020年6月16日に、最新版「CNBC Disruptor50」が発表されました。
この最新版の発表にあわせて「業界破壊企業」のページを全面アップデートしています。ダウンロードもできますので、ぜひご覧ください。 Join the dots 業界破壊企業ページ https://www.join-the-dots.net/disruptor.html 今年度は、CNBC Disruptor50の評価基準として「コロナ禍への対応」が追加され、コロナショックへの対応が意識されたランキングになっており、前年度と比較して28社が入れ替わりました。 驚くのは、選出された50社のうち、今年に入って新たに社員を雇用した企業が37社、コロナに新サービスなどで対応した企業が22社もあること。業界破壊企業の勢いとスピード感が際立ちますね。
2020年版の業界破壊企業は、2019年版と比較してみると、以下のような特徴があることがわかりました。
・業界破壊企業50社の創業者のうち「ミレニアル世代 (40才未満)」が、なんと51% ・シリコンバレー発が過半数を占めるが、アジア・欧州・中東の企業が急増して20%に ・コロナ禍で、フィンテック(金融)、ヘルステック(医療)、オンライン宅配が大きく躍進
この最新版「Disruptor50」に対応して、全面的にアップデイトした「業界破壊企業 2020 講演」と「hintゼミ6期のご案内」を組み合わせた無料Zoom講座を開きたいと思います。スライドは今からがんばってつくります!
日時 :7月19日(日) 10:30〜12:00 料金 :無料 (限定90名) メディア :Zoom (申込みしてくださった方に斉藤からURLをご連絡します) アジェンダ: 第1部 業界破壊企業 2020 (60分) ・業界破壊企業とはなにか? ・業界破壊企業、新しい3つのエッセンス (ミレニアル、グローバル、コロナシフト) ・新しい価値観、新しい潮流 ・質疑応答 第2部 hintゼミ6期のご案内 (30分) ・hintゼミ6期について (幸せ視点の経営学とイノベーション) ・質疑応答 Zoomによるライブ講座で、講師は僕。第二部は10月から始まる「hintゼミ 6期」のご案内になりますが、聞いてもらえるとうれしいです。 自分の組織を □ 社員が働きがいを感じる組織をつくりたい □ 指示なしで自律的に動くチームをつくりたい □ 心理的に安全な場のつくりかたを知りたい 個人ないし自社で □ 新しい事業やサービスをゼロから考えたい □ 最小コストで成功する事業を起ち上げたい □ 本業ないし副業で、ハッピーイノベーションを実現したい そんな課題をお持ちの方に、ここでしか得られない、具体的なメソッドと機会、ネットワークをご提供します。Zoomの人数制限がありますので、お早めに。ではではー ■ 最新の業界破壊企業、Disruptor2020 米国のニュース専用放送局CNBCが毎年発表している「業界を破壊する新興企業、トップ50社」の2020年度版が6月に発表されました。 未上場で設立15年以内の会社を対象として、ノミネートされたのは過去最大の1355社。その中から以下のような基準をもとに、専門家55名で構成された「The 2020 CNBC Disruptor 50 Advisory Council」(メンバーは公開) によって審査されています。 ・定量的な評価としては「スケーラビリティ」と「顧客の成長」を最も重視 ・定性的な評価としては「会社動向」や「主要技術」などをベースに総合的に判断 ・2020年度は、特別な指標として「コロナ禍の影響と対応」を定性評価項目に追加 その結果、生まれたのが、2020 CNBC Disruptor50 です。 毎年、半分前後が新たに選出されます。今年度のリストのうち、2019年度から継続してランキング入した企業は22社でした。 中でも驚くのは、コロナ禍以降の約3ヶ月間で、新たに社員を採用した企業が、50社のうちで37社もあること。国連事務総長が「第二次世界大戦以来の危機」と例え、大恐慌を上回る経済危機をもたらしたコロナ禍ですが、これらの会社群は、むしろそれを追い風にしているということです。 では、具体的にどのような分野が伸びたのでしょうか。 コロナ禍で躍進したカテゴリーをグラフ化してみました。 昨年度のリストと比較して、もっとも躍進したのが「フィンテック(金融系テクノロジー企業)」分野です。リスト順に、Stripe(カード決済システム)、Klarna(リアルタイム後払い決済)、SoFi(P2Pレンディング)、Welab(ネット銀行)、Better.com(ネット住宅ローン)、Lemonade(ネット損害保険)、Root Insurance(自動車保険)、Affirm(リアルタイム後払い決済)、Kabbage(小口融資)、Chime(ネット銀行)、Dave(ネット銀行)、Trulioo(個人認証・企業認証)、Ripple(国際送金ネットワーク)、Tala(小口融資)、Marqeta(カード決済システム)、Robinhood(ネット証券)の16社がランクインしました。昨年度はStripe、Affirm、SoFi、Lemonade、Robinhood、Kaggage、Transfer wise、Elevestの8社でしたので、8社増加しました。すべてオンライン専用で、AIを始めとするテクノロジーを駆使する金融系スタートアップであることがわかります。 続いて「ヘルステック(医療系テクノロジー企業)」分野です。Tempus(AIによる癌治療支援)、Neteera(非接触バイタルセンサー)、Heal(オンデマンド訪問医)、Healthy.io(オンライン尿検査)、Butterfly Network(スマホ連動の超小型スキャナ)、K Health(AIによるプライマリケア)の6社がランクイン。昨年はVirta Health、Progyny、Veritas Genetics、23andMeの 4社なので2社増加しました。新たにランクインしたうちの2社、NeteeraとHealth.ioはイスラエルのスタートアップであり、同国が新興企業育成に力を入れていることがわかります。 最後に「オンライン宅配」分野。コンビニより便利な、自宅まで届けてくれるサービス。これから巨大な産業規模になることが予想されている、ラストワンマイル商売の争奪戦です。Coupang(韓国)、Gojek(インドネシア)、Doordash(米国)、Grab(シンガポール)、goPuff(米国)、Didi Chuxing(北京)の6社がランクインし、個々に地域でシェアを伸ばしています。特にGojekとGrabはともに「スーパーアプリ」と呼ばれる「なんでもできる、何でも宅配できるポータルアプリ」としてシェア争いをしています。この分野に関してはアジアが最も進んでいるのが特徴です。昨年度はDoordash、Grab、Didiの3社だったので、3社増加しています。 これらは、特にコロナショックを追い風にしたスタートアップ群ですが、個別に見てみると、多くの企業が「コロナ禍に対応する製品サービスのピボットや独自対応」を数ヶ月間で開発・発表しており、その社数は22社に及んでいます。以下にそのアクションをまとめておきます。 コロナ禍におけるアクションは多様ですが、総じていうと、顧客やパートナーに対して、自社サービスで対応できるさまざまな支援を、業界破壊企業は極めて迅速に実行しているということです。 激変する社会環境の変化へ、いかに速やかに対応していくか。これからいよいよ、企業の学習能力が問われていく時代になるでしょう。個々企業の具体的なアクションについて以下にまとめてみました。 以上、最新2020年度版「CNBC Disrutpor 50」におけるコロナショックへの対応でした。さらに詳しい内容や個々の企業については「業界破壊企業ページ」に書かれているまとめてあるので参考にしてください。
また、今週日曜19日 10:30から、Zoomで無料講座を開く予定です。まだ席に少し空きがありますので、ご興味ある方はこちらのページからご覧ください。 最新版「ディスラプター50」に準拠した「業界破壊企業2020」無料講座を開催! 『業界破壊企業』の書籍内や講演でご紹介している「ハッピーイノベーション」を、具体的にはどう作ればいいのでしょうか。 そのエッセンスを、シンプルなスライドにまとめてみました。ゼロから事業を開発する「hintフレームワーク」の中から一部を抜粋したものです。 このフレームワークは、最新のイノベーション手法に、自分自身の30年近くにおよぶシリアル・アントレプレナーとしてとしての知見を加味したものです。まったくのゼロからハッピーアイデアを生みだす発想法も組み込んでいます。 講演に使うスライド。クリックすれば、すべて内容を閲覧できます あわせて、書面だけではなかなか伝わりにくいので、こちらのスライドをベースにした無料ライブ講義を、以下の日時に行うことにしました。第一弾が好評であれば、二回目以降も企画したいと思ってます。 日時 :6月14日(日) 10:00〜11:30 料金 :無料 (人数限定あり) メディア :Zoom (申込みしてくださった方に斉藤からURLをご連絡します) アジェンダ: 第1部 幸せ視点でイノベーションを創出する (30分) ・Zero to One ~ アイデアを発想する ・CPF ~ 顧客に共感し、課題を発見する ・PSF ~ 課題に対する解決策をつくる ・PMF ~ 市場が受け入れる製品をつくる 第2部 深く学び、実践するために (30分) ・hintゼミについて ・hintゼミ対談 〜 事業創造メソッドを自社ビジネスにどう活かすか? ・質疑応答 Zoomベースのライブ講演で、講師は僕。第二部ではhintゼミメンバーも参加して「現実のビジネスの中で、この事業創造メソッドをどう活かせばいいのか」みたいな話もしようかなと思ってます。hintゼミの紹介も入りますが、聞いてもらえるとうれしいです。 (ちなみに、僕はとってのhintゼミメンバーは価値観と知見をともにしたよき友人であり、頼れる同志です) □ 新しい事業やサービスをゼロから考えたい □ 最小コストで成功する事業を起ち上げたい □ 本業ないし副業で、ハッピーイノベーションを実現したい で、その方法を具体的に知りたい。と思う方、よろしければどうぞ。 Zoomの人数制限がありますので、お早めに。ではではー 思い返せば、今から12年前のこと。 そのとき、僕は行き過ぎた資本主義の中であがき苦しんでいました。 「なんとしても売上を上げ、資金を集めないと、会社の未来はない!」 経営不振の中で襲ってきたリーマンショックは、ループスにとっては「死刑宣告」に近かった。しかし、その経験から得た学びが、僕の「経営観」を180度変えてくれました。 お金視点の経営から、幸せ視点の経営への大胆なシフトです。 おかげさまで、わずか七人しかいなかったループスですが、2年間で一億円もの借金を返済し、奇跡の復活を遂げました。その経験に基づいた書籍「ソーシャルシフト」を上梓して以来、僕は「経営のあるべき姿」をいろいろなところでお話してきました。 「よくわかります。それは理想論で、現実にはむずかしいですよね」 もう何度、この言葉を言われたことかわかりません。それもそのはずです。「幸せ視点」を標榜しても、その多くは放任主義になり、経営が悪化してしまう。なぜなら、その宣言と同時に「外発的に社員の行動を強制する」ことができなくなるからです。 お金視点の経営:社員の行動を統制する ・予算を達成すれば昇給、予算未達なら昇給なし ・上司に従えば昇格、命令をきかなければ降格する 幸せ視点:社員や顧客の気持ちを生みだす ・社員が「積極的に交流する場」をつくる ・社員が「熱中できる仕事の環境」をつくる ・顧客が「アハ・モーメント」を感じる製品をつくる 一度、歯車がまわりはじめれば「幸せ視点のチーム」は圧倒的に強い。社員が自らの強みを生かして自走しはじめるからです。しかし、そのためにはさまざまな知見や技術が必要で、それがないと標榜した人が苦しむ結果に終わってしまう。 幸いにも、そこから大学の教壇に立つ機会を得られたことで、四年間の試行錯誤を経て、経営学と起業家経験を組み合わせた実践的なノウハウを「幸せ視点の経営学」として体系化することができました。それを三ヶ月という短い期間に凝縮し、社会人向けにお伝えしている私塾が「hintゼミ」です。 今回は、hintゼミでお話している「経営学」の入門編として、エッセンスをまとめた資料をつくってみました。(入門編としましたが、実際にはなかなかに濃い内容になっちゃいました。そういうキャラだと思ってあきらめてください😭) 講演に使うスライド。クリックすれば、すべて内容を閲覧できます あわせて、書面だけではなかなか伝わりにくいので、こちらのスライドをベースにした無料ライブ講義を行うことにしました。おかげさまで、第一弾(6月13日20時)が好評で満席になりましたので、以下の日程で二回目を開催いたします。 日時 :6月21日(日) 10:00〜11:30 料金 :無料 (人数限定あり) メディア :Zoom (申込みしてくださった方に斉藤からURLをご連絡します) アジェンダ: 第1部 幸せ視点で考える、いいチームのつくりかた (60分) ・ポストコロナは選択の時代 ・つながりは資本である ・組織の土壌をこわすもの ・豊かな土壌のつくり方 ・意味からはじめよ 第2部 深く学び、実践するために (30分) ・hintゼミについて ・hintゼミ対談 〜 どう組織変革に取り組めばいいのか? ・質疑応答 Zoomベースのライブ講演で、講師は僕。第二部ではhintゼミメンバーも参加して「現実の組織の中で、どう変革に取り組めばいいのか」みたいな話もしようかなと思ってます。hintゼミの紹介も入りますが、聞いてもらえるとうれしいです。 (ちなみに、僕はとってのhintゼミメンバーは価値観と知見をともにしたよき友人であり、頼れる同志です) 自分の組織を □ 社員が働きがいを感じる組織をつくりたい □ 指示なしで自律的に動くチームをつくりたい □ 心理的に安全な場のつくりかたを知りたい みたいにしたい! その方法を具体的に知りたい。と思う方、よろしければどうぞ。 Zoomの人数制限がありますので、お早めに。ではではー 【追記】 6月13日は申込みが約100名となりました。ありがとうございます😭 こちらはいったん締め切りとさせていただきます。 追加の無料講演として「6月21日 10:00〜11:30」をご用意しました。 今後は、そちらに申込みしていただけると幸いです。 目標や計画を立てたときは気合い入ってたのに、思い通りにいかなくて、いつしか重荷になってきて、、、つらい、わたしってだめ、めちゃ落ち込む。みたいなこと、ありませんか? プランを考えた直後は「成長してる自分」を想像して、めっちゃワクワクしてるんですよね。でも、結局「理想」と「現実」のギャップを埋められず、結局は自己嫌悪で終わってしまう。こんな悩みを抱える人は多いかもしれません。 経営学者のピーター・センゲは、経営学の名著『学習する組織』の中で「ビジョンこそ、組織や個人が進化するための推進エネルギーである」とし、ビジョンの大切さを説きました。 絵で書くとこんな感じ。輪ゴムをはさんで、上がビジョン、下が現実。その間に引っ張りあう緊張状態(テンション)が生まれ、それが行動するためのエネルギーになる、という考え方です。 「理想と現実のギャップ」があることは素晴らしいこと。なぜなら、そこに「自分を成長させてくれるヒントとエネルギー」がつまっているから。そのような緊張状態を創造的なエネルギー源としてポジティブに捉える態度を、センゲは「クリエイティブ・テンション」と表現しました。 でも、現実には、なかなかそうはいきませんよね。 相手があるような仕事だとなおさらです。 例えば、課長があなたに大切なイベントのリーダーをまかせたとしましょう。あなたは気合いをいれてチームの目標や計画を考え、メンバーとともにプロジェクトをはじめますが、すぐにいろいろな問題がおきてきます。 計画しても、メンバーが自発的に動いてくれない。 集客も予定通りにいってない。ガラガラかも。どうしよう。 やばい。このままだと大変なことになる。 こんな時、あなたならどんな気持ちになりますか? ほとんどの場合は「理想と現実のギャップ」にショックを受けて、感情的な態度をとってしまうのではないでしょうか。センゲは、そのような態度を「エモーショナル・テンション」と呼び、学習の妨げになると注意を喚起しました。 例えば、こんな反応です。 物事がうまく行かない時に「エモーショナル・テンション」に落ち込むと、ほんとうにつらい精神状態になっていきます。僕もそうだし、誰しもが経験あることだと思います。 こんな時、わたしたちはどうすればいいのでしょう? 僕は、次の5つのステップで、この「エモーショナル・テンション」を「クリエイテイブ・テンション」に切り替えるよう心がけています。 ① 自分の不機嫌さと、そのの原因に気がつく この状態になると、仕事を離れても気分の切り替えができず、気持ちが塞いでしまうことが多い。ご飯食べても、人とあっても、なぜかブルーになったり、不機嫌になったり。そんな時の最初の一歩は「自分の不機嫌さ」に気がつくこと。そして、自分の心を内省して、無意識の中でうごめくイライラの原因「理想と現実のギャップ」を発見することです。 ② 今の自分、今の状態を、そんまんまに受容すること イライラのことを見つけたら、次に自分に優しくなること。だって、今の自分や現実を直ちに変えることは、きっとお釈迦様でもできません。だから、無理に現実を変えようとは考えず「これがわたしだし、これが現実。今はこれでいいんだ」と、無条件に受容してあげる。そうすると自己否定がとまり、ちょっと気持ちが楽になります。 ③ 結果ではなく「学習にこそ価値がある」と意味づけを変える 目の前にある現実と理想とのギャップは「学習するためのエネルギーであり、自己成長のためのチャンス」なんだと、現実をとらえ直してみる。「現実そのもの」ではなく「現実に対する「自分の中の意味づけ」を変えてみる。ここがターニングポイントです。 ④ 今、目の前にあることに集中する 今の現実を学習のチャンスととらえたら、あとは 自分の持つ心理的エネルギーを100%、今に集中する。心のカメラのピントを、今この瞬間にぐっとフォーカスするようなイメージを持つといいと思います。すると、自然と「過去への後悔」と「未来への不安」という、自分を苦しめる悩みの素が頭の中から消えてゆき、ポジティブな気持ちが復活してきます。 ⑤ 自分の持つ創造性を発揮する ここではじめて、今まで自分がたどってきたプロセスを客観的に振り返り、未来をよりよくするヒントを探します。自己否定は、学習にはマイナス効果しかないのでご法度です。効果的なのは、同じ環境の友人がいると想像し、友人の相談にのるイメージを持つことです。(自分のことになるとだめになっちゃうメカニズムを「ソロモンのパラドックス」といいます。これはまた別の記事で) そこで学びのタネを発見したら、未来をつくるアクションをクリエイティブに考えてゆきます。自分の悩みを打ち明けて、チームの仲間に相談するのもいいでしょう。 このプロセスを体得できると、常に 自分の持つ潜在能力を100%活かす ことができるようになります。 結果はどうでるかわからないけれど、少なくとも自分のできるベストの結果を出すことができるし、最高の成長を得られます。そして多くのケースでは、あなたのポジティブな態度に対して、まわりから称賛の目で見られるようになるでしょう。 これが「クリエイティブ・テンション」のつくりかたです。 これができると、ほんとうに人生が変わります。 ぜひ、チャレンジしてみてくださいね。 きっと、今日よりいい明日が待ってますよ😊 【今日のまとめ】
1. 理想と現実のギャップは、自分自身を成長させる創造的なエネルギーである。 2. 感情的にならず、創造的な態度を身につけるられると、人生が大きく変わる。 3. そのためには、現実を変えようとせず、現実に対する意味づけを変えること。 4. そうすると、今に集中できて、今の自分にできるベストな結果を生み出せる。 5. 大切なのは学習と自己成長。結果はあとからついてくるので、気にしない。 ■ 幸せ視点の経営学を日常に活かすシリーズ ・ 落ち込むか、楽しむか、それが人生の分かれ道 ・「売上を求めると、売上は逃げていく」の法則 ポジティブな態度を身につけたい。さらに、現状をよくするための、もっと具体的な解決策を学びたい。そういう方は hintゼミ へどうぞ。 学習院大学の講義が終わっでブログが途絶えていたので、これからは趣をかえて「幸せ視点の経営」や「業界破壊企業」について、ノート感覚でブログしていこうと思います。 はじめの一歩は、幸せ視点の経営に対する、根本的な疑問から。 「幸せ視点の経営」というと、反射的にいただくのが「でも、売上や利益は大切ですよね」という質問です。売上や利益は大切。それに反対する人はいないし、僕も心からそう思います。売上や利益がないと、会社は持続することができないからです。 経営者の考え方を「お金視点」と「幸せ視点」とわけて、その特徴をまとめてみました。ほとんどの企業は「お金視点」で経営してますね。株式会社の仕組み自体が「株主視点(投資家視点)」でつくられたものだからだし、上場して株主が強くなると、より短期的な利益を求められるようになるからです。 では「お金視点」で売上を必死に求めたら、ほんとうに売上は上がるのでしょうか。 商品やサービスをよくしたり、売れる仕組みをつくったりすることはもちろん大切。でも会社の実力以上に「無理にでも売上をあげたい」と思うのが経営者の常。そこで、細かく数値目標を立てて、それを達成しようとすることになります。 でも、僕はそういう過度な管理には反対する立場をとっています。 なぜなら、売上は求めると逃げてしまうものだから。 お客さんの立場になれば、わりと当たり前です。こちらの話を聞かずに契約を急ぐ営業マンからは逃げたくなっちゃうし、少なくとも「私、ずっとこの人から買おう♡」とは思わないもの。 それに、その営業マンこそかわいそう。課長から「予算必達だぞ!ギャップを埋めるプランを今日中に出せ!」なんて詰められたら、お客さんのことなんか考える余裕なんて1ミリもないからです。 結果を求めると、結果が逃げてしまう。 ここに経営の本質があるんじゃないかなと思ってます。 じゃあ、なんで管理者はそう思ってしまうのか。 それは、若いころの経験が生んだメンタルモデルが原因かも知れません。 毎日勉強すれば必ず成績はあがる。毎日トレーニングすれぱ必ず身体能力が高まる。自分を律することができる成績優秀だった人ほど、出世して管理職になる傾向があります。そして、みずからの成功体験から「組織も厳しく律すれば成果を出せるはず」と思ってしまうのでしょう。 でも「勉強や運動」と「営業」は根本的に違う。勉強や運動は「自分が頑張ればいいこと」ものだけど、営業は「人を相手にすること」であり、人には「心」があるからです。 人は誰しも「自分が主役の人生」を送っていて「自分の行動は、自分で決めたい」と思って生きてます。買えと言われれば買いたくなくなるし、売れと言われれば売りたくなくなる。したいことがあっても、無理にすすめられるとしたくなくなる生き物なのです。 だから、成果をあげようとすると、成果は逃げていく。 じゃあ、どうすればいいのか。それは「急がばまわれ」でいくことです。それをわかりやすく分解したのが、ダニエル・キムが提唱した「成功循環モデル」です。 こちらは「売上は求めると逃げてしまう」ことをあらわしたサイクルです。 無理に売上(結果)をあげようとすると、人への強制が増えていく。そのため、メンバーにストレスがかかり、人間関係が悪くなる。「結果だけあげればいいんだろ」ってことになり、それ以外のことに無関心になる。そういう組織はパフォーマンスが落ちるので、管理者の眉が釣り上がり、予算必達の圧力が強まっていく。地獄のようなサイクルです。 では、どうすれば「いいサイクル」を作れるのでしょう。それは、面倒でも「メンバーの人間関係」を高めていくこと。まずは対話から始める。リーダーが胸襟をひらいて、みんなで率直に話し合い、信頼関係を築く。すると前向きな気持ちになり、いいアイデアが生まれ、一人ひとりが自律的に行動するようになる。そういう組織はパフォーマンスがいいから、結果を出してさらに結束が固める。幸せなサイクルです。 これが、チームの成功を生むための「いいサイクル」です。 「幸せ視点の経営」とは、この成功循環モデルを基軸として、さらに、どうすればメンバーひとりひとりが仕事に熱中できるか、どうすれば息のあったコラボレーションが生まれるか、どうすれば個人のワクワクと組織の目標がひとつになるか、ということを一つずつ知見と技術に基づいて実現していく経営のことです。 ただし「幸せ視点の経営」は「お金視点の経営」よりむずかしい。それは人間に対する深い理解や、自分自身の人間的な成長、さらに動機づけや場の安全性を高めるための知見や技術の習得が必要となるからです。このあたりを話し始めると、延々と長くなってしまうので、次回以降のテーマとしましょう。(もっと知りたい方は こちら へどうぞ) 最後に、大切なことをひとつだけ。 やっぱり「結果」も「人間関係」も大切だから、両方とも同時に実現しよう。 と欲張るのは「ご法度」だということ。 そのふたつを同時に求めると、数値化されてわかりやすい「結果」の方が重視されて、必ず悪い循環に入っていきます。しかも、矛盾する指示による「言行の不一致」によって、リーダーの信頼は毀損することになってゆきます。 いや、そんな時間はない。もうほんとにギリギリのところなんだ。 その気持ち、痛いほどわかります。僕がほんとうにそうだったから。でも、そんな失敗経験が教えてくれたことは「無理に結果を出そう」とせずに「成功の循環をできるかぎり高速で回す」ことが大切だということ。 リーダーがメンバーに悩みを打ち明け、情報をオープンにして、彼らの意見を傾聴する。そして組織をよくするための第三案を熱意をもって話し合うこと。そこから起死回生のアイデアや、それを実現するためのチームの一体感がでてきます。この学びのサイクルを高速化するのです。 何度も何度も失敗して、熱いヤカンにさわって学んできた僕がいうのだから、間違いありません😁 リーダーは悩みをひとりで抱えるのをやめて、今からメンバーに話しかけてみましょう。きっとそこから、いい循環は始まります。 【今日のまとめ】 1. 結果をあげようとすると、結果は逃げてしまう。 2. 成功の循環を常に意識する。胸襟を開き、対話することから始める。 3. さらに「幸せ視点」の知見や技術を知ると、チームは萌えて自走する。 4. 二兎 (結果も人間関係も) 追う者は、一兎も得ず。 |
著者ビジネス・ブレークスルー大学教授、現役起業家の斉藤徹です。人を幸せにしたいと願う起業家や社会人を育て、一緒に世界をもっと優しいところにする活動をしてます。 アーカイブ
12 月 2020
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